いま聴いてほしい若手ピアニスト ― 奥井紫麻(Shio Okui)

世界の舞台で経験を重ねながら、これからさらに大きな飛躍が期待される日本の若手ピアニスト、奥井紫麻。
2004年生まれの彼女は、幼い頃からその才能を発揮してきました。
5歳半でピアノを始め、7歳からエレーナ・アシュケナージに師事。8歳で早くもオーケストラと初共演を果たし、12歳のときにはワレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団と共演しています。
そして15歳になると、モスクワ・ヴィルトゥオージ室内管弦楽団のヨーロッパ・ツアーにソリストとして参加。ベルリン・フィルハーモニー、ウィーン・ムジークフェライン、プラハのスメタナホール、ハンブルクのエルプフィルハーモニーなど、世界を代表するコンサートホールの舞台を経験しました。
まだ10代のうちにこれほどの国際経験を積んだ、日本でも数少ないピアニストのひとりです。
ロシアで磨かれた音楽
奥井紫麻の歩みを語るうえで欠かせないのが、ロシアで受けてきた音楽教育です。
モスクワ音楽院付属中央音楽学校を経て、グネーシン特別音楽学校では名教師タチアナ・ゼリクマンに師事。2023年には同校ピアノ科を特別表彰を受けて首席で卒業しました。
現在はスイスのジュネーヴ高等音楽院に学び、アルゼンチン出身の世界的ピアニスト、ネルソン・ゲルナーのもとで研鑽を積んでいます。
幼少期からロシアの音楽文化の中で学び、現在はさらにヨーロッパへ。そのバックグラウンドも、奥井紫麻というピアニストを知るうえで興味深いポイントです。
コンクールでも着実に実績を重ねる
奥井紫麻は、幼少期から数々の国際コンクールでも結果を残してきました。
2015年、第1回クライネフ・モスクワ国際ピアノコンクールのジュニア部門で最年少第1位。翌2016年にはモスクワ国際グランドピアノコンクールで最年少受賞を果たしました。
その後も、2022年のパデレフスキ国際ピアノコンクール入賞、2024年のジュネーヴ・フレデリック・ショパン協会「Prix Mireille Klemm」受賞と実績を重ね、2025年にはスイスで開催されたベルン国際ピアノコンクールで第2位を受賞しています。
興味深いのは、コンクールだけを中心にキャリアを築いてきたピアニストではないこと。
幼い頃から世界各地の音楽祭やコンサートに出演し、多くの指揮者やオーケストラとの共演を経験してきました。
すでに世界の舞台を知る、若きピアニスト
これまでに共演したオーケストラも非常に豪華です。
海外ではミハイル・プレトニョフ指揮のロシア・ナショナル管弦楽団、ウラディーミル・スピヴァコフ指揮のロシア・ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団などと共演。
日本でもNHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団など、国内を代表するオーケストラとの共演を重ねています。
20代前半という若さを考えると、その演奏経験の豊富さには驚かされます。
Piabaseが注目する理由
奥井紫麻さんの魅力は、華々しい経歴だけではありません。
高い技巧を持ちながら、それだけを前面に押し出すのではなく、作品の持つ色彩や歌を丁寧に描いていく演奏。そして、若さの中にすでに感じられる音楽の深さ。
ロシアで培った音楽的な土台と、幼少期から世界の第一線で積み重ねてきた経験が、これからどのような演奏へと結びついていくのか。
2025年には初のソロアルバムとなる『SHIO OKUI IN CONCERT Recorded at Takasaki City Theatre 2025』もリリースされました。
すでに国内外で豊富なキャリアを持ちながら、ピアニストとしてはまだ20代前半。
「これからどこまで進んでいくのだろう」
そんな期待を抱かせてくれることも、若いピアニストを追いかける楽しさのひとつです。
これからの活躍を、ぜひ注目してほしいピアニストです。
Piabaseおすすめの一演
スクリャービン《幻想曲 ロ短調 Op.28》
15歳とは思えない、圧巻のスクリャービン。
最後に、奥井紫麻を知るならぜひ聴いてほしい演奏をひとつ。
スクリャービンの《幻想曲 ロ短調 Op.28》は、複雑な響きの中で長い旋律を歌わせながら、大きなクライマックスを築いていく難曲です。
この作品を演奏した当時、奥井紫麻はまだ15歳。
もちろん、その年齢でこの作品を弾いていること自体にも驚かされます。しかし、それ以上に印象的なのは、難しいパッセージを弾き切る技巧だけではなく、作品全体をひとつの大きな流れとして聴かせる音楽のスケールです。
繊細な響きから一気に押し寄せるようなクライマックスまで、スクリャービン独特の濃密な世界が広がっていきます。
「これを15歳で……?」
演奏を聴き終えたとき、きっと同じことを思うはず。
奥井紫麻というピアニストの凄さを知るために、ぜひ一度聴いてほしい演奏です。